



これから経理・簿記をやろうと思っている人にとって「本当になくなってしまうの?」という心配を解消します!
この記事の内容
- 経理、簿記なくならない理由
- いろんな人の意見
- 経理のない未来
スペック:簿記1級。グループ4社の経理歴10年。
「経理がなくなるほど技術は進歩してほしい」
私は経理の仕事をしていますが、経理がなくなるほどの未来がきたら面白いと思います。
実際に現場で働いているからこそわかりますが、その未来はまだまだ先です。
冷静な立場で経理の将来を話します。
経理の仕事はなくなる?
回答:なくなりません。少なくとも100年先まで大丈夫です。
経理がなくならない理由
経理の仕事は幅広くて、一つ一つが細かいからです。
ざっとまとめるとこんな感じ
- 金銭の取り扱い
- 資金調達
- 各種手続き
- 給与計算
- 会計ソフトの入力
もっとありますが、キリないのでこのくらいにしておきます。
昔と比べると全体的に機械化は進んでいます。
ただ、すべて個別のソフトで止まっています。
給与ソフトだったり、会計ソフトが良い例ですね。
これらの仕事がなくなると思いますか?
私はなくなってほしい派ですが、なくなる未来が想像できません。
もしかして「簿記がなくなる」と言いたい?
「経理がなくなる」と言っている人は、もしかして「簿記の知識が必要なくなる」言いたいのかもしれません。
経理といえば、会計ソフトを扱うのが醍醐味みたいなところがありますからね。
会計ソフトの自動化さえできれば、経理の仕事の半分はなくせます。
では簿記はなくせるのでしょうか?
簿記の知識は必要なくなる?
回答:なくなりません。こちらも同じく100年先まで大丈夫です。
「簿記の知識が必要なくなる」と言っている人は、簿記を使った実務経験がない人じゃないでしょうか。
ただ、私は100%ムリとは思ってはいません。技術的には可能です。
すぐに実現できない理由としては
- 課題が多すぎる
- 人の手がまだまだ必要
- 費用対効果があっていない
これがすべて解決できるようになるには、かなり長い年月が必要ということです。
課題は会計ソフトの自動化
簿記を必要とする目的をみると課題が見えてきます。
大きく分けるとたった2つしかありません。
簿記の目的
- 財務分析
- 税金の計算
この2つを正しく算出するのに、日々の取引を会計ソフトに入力しています。
つまり、会計ソフトを自動化できれば課題はすべてクリアできたようなものです!
ただ、この取引記録を機械と結び付けるのが簡単じゃないんですよ。。。
一言でいえば、細かすぎて機械にはまだできません。

会計ソフトの進歩が止まっている
会計ソフトとは?
日々の取引データを手動で入力して、売上や費用などをデータ化するもの。
会計ソフトを使っていない企業はほとんどないほど普及は進んでいます。
例外として、税理士に委託している会社や、未だに紙で提出している会社もまれにあります。
機械化は順調に進んでいるようにも見えますが、会計ソフトが販売されたのは30年以上も前のことです。
現在は、昔より使いやすくなったくらいで技術的な進歩はさほど見られません。
機械化の兆候
最近では機械化の兆しがちょっと見えてきました。
なんと夢にまでみた【仕訳】の自動化です!
仕訳とは?
会計ソフトに入力する、金銭に関わる取引の記録のこと。
【例】ペンを100円で買った。
(事務用品費)100 (現金)100
具体的には、クレジットカード(ビジネスカード)を使って、支出データを会計ソフトに紐づけるというものです。

【仕訳】は金銭的な取引がメインなので、簡単な支出だけでも自動化させてしまおう!
というデジタル化の動きですね。
支出したお金がデータになっていれば会計ソフトにも取り込みやすい!
すべての決済手段がクレジットカード決済になれば解決するじゃないか!
と思われますが、またしても問題が山積みです・・・。
クレジットカードの問題点
クレジットカードを決済手段にするには3つの問題があります。
問題① 社員に持たせるリスクが高い
これは想像のとおり、社員が不正に使ったり、無くしてしまうリスクです。
誠実な社員ばかりで社内を固めるのは困難です。
現金での仮払いや、銀行振込での精算をしている会社が多いのはこのためです。
問題② 決済NGのサービスが多い
法人だと、クレカ決済が使えないサービスが多いことに驚きます。
同じサービスでも個人ならクレカ決済が使えることがあります。
法人でクレカ決済NGの一例
- 電話料金
- レンタカー
- 保険料
法人でクレカ決済NGの理由は、決済手数料の高さです。
クレカ決済は3~5%くらいとされていて、サービスを提供している会社が負担しています。
法人の場合は決済料金が多額なので、サービス提供側は嫌がるんですね。
しかたなく会社では口座振替(引き落とし)にしています。
問題③ クレジットカード以外の決済手段が多い
機械化できないことで一番悩まされるのが決済手段が多いことです。
今はクレジットカードの支出自動化をなんとか進めているところですが、世の中は決済手段増える一方です。
クレカ以外の決済手段
現金、銀行振込、小切手、約束手形、電子マネー
最近だと仮想通貨も加わりつつある…




クレジットカードですら自動化の成功はまだ先の状況です。
たとえ成功したとしても、数ある決済手段のたった1つです。
自動化の道のりが程遠いのがわかりますね。
簿記は委託されてしまう?
簿記を使う仕事は委託できてしまうから、簿記は必要なくなるのでは?
回答:簿記の知識がある人が作業していることに変わりはない。
つまり、簿記を持った人がどこで働いているかの違いなので、結局は簿記が必要になるということです。


中小企業のように規模が小さければ会計入力業務を委託することはできます。
ただし、委託するにはデメリットがあります!
デメリット① 委託先がテキトーに入力しちゃう
報酬を払って委託するので、税理士法人などの委託先はしっかりと作業してくれそうですよね?
実は逆で、テキトーに入力されるケースの方が多いです。
なぜかというと、細かい取引の内容がわからないから「なんとなく」でやってしまうことがあるからです。
税理士法人からすると、税務上の誤りがなければ良いので、細かく入力する必要がないわけです。

デメリット② すぐに業績を知ることができない
社内で作業していれば、すぐに業績を答えてくれます。
これが委託になってしまうと、すぐにレスポンスが返ってこないことがあります。
今すぐ業績や状況を知りたい経営者は大きなデメリットになります。
会社で簿記が必要なワケ
税金を余計に払わないためには、簿記を持った人が必要です。
会社は納税義務があり、年に1度の決算申告をしなければいけません。
決算申告がちゃんとできていないと、税務署に指摘をされて余計に税金が取られてしまいます。
顧問税理士を雇っていても、会社の細かいことまで把握することはできません。
そこで簿記の知識をもった経理の出番です。
経理ならお金にかかわる取引をすべて把握している立場です。
その経理が税理士と連携を取ることで、難しい決算申告をスムーズに進めることができます。
結果、間違った決算申告をせずに余計な税金も払わなくて済むことになります。
「経理はなくなる?」いろんな人の意見


経理を知らない人ほど「なくなる派」が多い。
システムや経理に詳しい人ほど「なくならない派」の意見が多い印象です。
※独自調査によるアンケート結果
経理はなくなる派の意見
60代 男性 業務改善コンサルタント
AIに仕事が奪われる可能性が一番高いのが経理
40代 女性 主婦
テレビでなくなるって言ってた
30代 男性 企画部
企画はアイデアが大事だからAIにはできないと思う。経理はAIでできそう。
経理はなくならない派の意見
40代 男性 システム会社の社長
クラウド会計ソフトの失敗を見てきたからわかる。
導入すれば経理作業がなくなるというのは誤解。作業が減る程度。
40代 男性 元経理
経理はAI化によってなくなると言われてるけど、実際はそれほど進んでないんだよな…なくなるとは思えない
30代 女性 現役経理
無くなるのは単純作業で、上層部の説明は残ると思う。
経理雇用者は減ると思うけど、その分管理会計の仕事が増えそう。
20代 女性 公認会計士
会計監査と税務調査がある限り、経理の仕事はなくならない。
経理のない未来を想像
「経理は今すぐにはなくならない」と思っています。
ですが、はるか先の未来では経理がなくなっているかもしれません。
もし経理がなくなる未来がきたら、どんなことが起こるのか。
AI技術が格段に進んだ未来を想像します。
単純作業からなくなっていく
機械の得意分野は、データにされているものを単純作業することです。
日々の入金・出金の作業が得意分野になりそうです。
金銭はすでにデータ化されていて、支払先・入金先もわりやすいものだからです。
あとは勘定科目もAIで判断してくれたら感動レベルです。
勘定科目とは?
入金⇒売上、受取利息、雑収入など
出金⇒仕入、消耗品費、交際費など
これらが正確に入力されれば経理作業の半分が減ります。

機械を扱う人が増える
経理の人数が減るかわりに、増えるのが機械を扱う人です。
未来のAIはどのような形をしているでしょうか。
2つ考えてみました。
①スマートスピーカー
「OK!Google.●●株式会社に5,500円振り込んで」
これだとちょっと手間でしょうか。
未来はもっとスマートなことを期待します。
②クラウド
- 【売った側】請求書のかわりに商品と金額を登録
- 【買った側】承認するだけ
- すぐに振込完了
- 会計入力も自動でされる
このような機械化ならスマートになりますね。
セキュリティ面などいろんな課題はありそうですが。
結局のところ、機械を扱う人が必要になりそうです。
不正と節税
経理のAI化によって、たびたびささやかれるのがこの2つ。
- 不正がなくなる
- 節税がしにくくなる
不正がなくなることは全世界的にも歓迎されます。
ですが、節税がしにくくなるのは経営者としては問題です。
なぜそのようなことが起こるのか。
その理由は、機械はありのままを入力してしまうので、グレーゾーンを狙えなくなってしまうからです。
不正と節税は、表裏一体です。
国は全面的にAI化を歓迎しそうですね。


結論:経理も簿記もなくならない
経理と簿記はすぐにはなくなりません!
その理由
- AIの技術不足
- 作業の幅が広すぎる
- 知識がないと不便な分野がある
現場にいる私の感覚では「経理や簿記がなくなるとしても100年先」という意見は変わりません。
それくらい機械化される兆候がありません。
機械化の兆候があるとしたら
簡単な分野から進歩が見られるはずです。
例えば、個人でおこなう確定申告や年末調整が先になると予想します。
経理が使う会計ソフトは会社での取引です。
個人の確定申告と比べると、規模が大きくてずっと複雑だからです。
確定申告や年末調整は国民の大多数が関係します。
機械化によって、もしワンクリックで【計算&申請】ができたら使いたくありませんか?
確定申告や年末調整の方が、使う人が多くて会計ソフトよりも簡単に実現できます。
簡単なものすら機械化できなければ、経理の分野には届かないと思っています。
現在のAI技術
現在、世の中に広まっているAIといえば
- スマホのAI
- スマートスピーカー
- WebサイトのAIチャット
これらが一般的です。
使ったことある人ならわかると思いますが、結構ガッカリしませんか?
一言に対して1レスポンスで、的外れな答えが返ってくることもしばしばです。
もっと言えばイライラしちゃいます
商品として売られているAI技術はまだこのレベルです。
そう考えると、経理がAIに替わる日はまだずっと先になりそうですよね。
経理・簿記は今からでも間に合う
これから経理・簿記を目指してもムダになりません。
機械化が実現してたとしても作業がラクになる程度です。
生きているうちにその日すら来ない可能性だってあります。

知識がムダになったり、仕事は奪われる心配はないということです。
これから経理・簿記を目指そうと思っているなら「迷わず進むべき!」という結論でした。
この記事を書いた人
ユン